日本とアジアの国々、お口の中からのぞいてみよう!【前編】

以前ご紹介したように、日本の子供達のお口の中から、ムシ歯が少なくなってきています。(素晴らしい!)

さて、アジアの国々は、どのような状況なのでしょうか?

これからの世界の経済を牽引(けんいん)すると言われ、急速に発展し続けるアジアの国々を、お口の中から見てみましょう。

 

まず、おさらい。日本の状況は?


 

前回、「ムシ歯は昔より減ってるの?」でご紹介したように、参考にする数値には、dft指数というものを用います。

ムシ歯になっている歯、そしてムシ歯を治療した歯を合計した数値です。

 

日本の6歳児のdft指数は2.4。[1]

 

6歳児のお口の中には20本の乳歯がありますが、そのうち平均すると2.4本がムシ歯になったことがある、ということです。

 

半世紀前から比べると、劇的に少なくなってきている日本のムシ歯。

しかし、今度は、ムシ歯の無い子・多い子の「格差」が問題になってきている、とも言えます。

 

さて、この数字を目安に、アジアの国々を旅してみましょう!

 

タイ(Thailand) 〜微笑みの国〜


 

 

日本から飛行機で7時間。

微笑みの国とも呼ばれ、とても温和な国民性の熱帯国です。

特に首都バンコックは急速に発展し続け、市内のいたるところで超高層ビルの建設が進んでいます。

 

 

そんな発展を続けるタイの人口は、6700万人。

そして、5-6歳児のdft指数は、4.4。[2]

 

現在も下がり続けているdftは、国が主導で行っている保健衛生事業の賜物です。

地方の各村に設置された保健所に、「歯科衛生士」が配置され、時に1万人もの村人たちのお口の健康を管理します。

家庭を訪問するなど、その村における健康の管理だけでなく、なんと歯を抜いたり、ムシ歯を詰めたりも任される、スーパー衛生士さんたちが活躍しているんです!

 

水道などの生活インフラが整うとともに、こうした保健事業が、ムシ歯の減少に貢献しているんですね!

 

カンボジア(Cambodia) 〜悲劇の歴史をもつ国〜


 

 

一度は訪れたいという方は多いはず、アンコールワットの存在する国が、このカンボジア。

アンコールワットのあるシェムリアップには、連日多くの外国人が集まり、賑わいをみせています。

また、首都プノンペンも、建設ラッシュで高層ビルが次々と建っています。

 

 

そんな発展を見せるカンボジアですが、さほど昔でもない、つい30年ほど前、ポルポト政権により国民の大量虐殺が行われたという、悲惨な歴史を持っています。

国民が、同じ国民を虐殺し、人口の実に三分の一が殺された、とも言われています。

特に、その中でも学者や有識者が殺害されたため、この国の技術的・科学的発展が大きく遅れてしまいました。

 

そんなカンボジアの人口は、1500万人。

5-6歳児dft指数は、なんと9.0。[3]

子供の歯の、約半分がムシ歯になってしまっている現状です。

 

カンボジア保健省(厚労省)も、このムシ歯を減らす保健事業を実験的に始めているところですが、まだまだ効果が現れるのははるか先のことと考えられます。

 

マレーシア(Malaysia) 〜多民族が平和に暮らす国〜


 

 

タイの南、こちらも熱帯気候の国、マレーシア。

マレー系、中華系、インド系の人々が暮らす、多民族国家です。

植民支配との戦いという歴史をもつ国で、長い苦労の時代がありました。

ちなみに国立博物館などでは、植民時代の後、大戦中の日本のことをかなり批判的に語り伝えています。

(独立国を保ったタイが親日であることに対照的ですね)

 

 

現在は、多民族による異文化が混ざり合い、文化的にも非常に魅力的な国です。

また、首都クアラルンプールを中心に、高度に発展し、高層ビルだらけの町になっています。

シンガポールと海を挟んで向かい合うジョホールバルの発展もめざましく、海外からの投資対象として、あるいは多くの日本人も移住している現状です。

 

 

そんなマレーシアの人口は、3000万人。

6歳児のdftは3.9。[4]

こちらも、国の発展とともに、医療インフラも整備され、ムシ歯も減少傾向にあります。

 

シンガポール(Singapore) 〜世界一住みやすい移民国家〜


 

 

マレーシアの南端、ジョホールバルから海を挟んですぐ隣、世界の金融センターとも言われるのが、シンガポール。

マーライオンが有名ですが、超高層ビル群は夜も明々と光り輝き、金融大国の印象を強く与えます。

 

 

元々はマレーシアから分離した国で、金融サービス事業を中心に、グローバルな政策で発展しました。

「道で唾を吐いたら罰金」に代表されるように、とにかく全てを厳しく法律で定めることで、移民国家を成り立たせてきました。

 

そんなシンガポールの人口は、540万人。

5-6歳児のdft指数は、3.3。[5]

 

アジアの医療者の留学先としても目指される、シンガポール国立大学。

医療への力の入れ方に対し、その印象からは、ムシ歯の量はまだ減少させる余地があるようにも感じます。

 

まとめ


 

このようにムシ歯の数を見てみると、世界が見えてきませんか?

全体的には世界を牽引する経済成長を見せるアジアの国々も、状況はそれぞれ大きく異なります。

 

そして、そんなアジアの中で、日本はこれからどのように動くべきか。

なんだか見えてくる気もしませんか?

 

次回も引き続き、他のアジアの国々を見ていきましょう!

 

 

[1] Report on the survey of dental diseases (2016) Japanese Society for Oral Health

[2] Bureau of Dental Health, Department of health, Ministry of Public Health. National Oral Health Survey, Thailand 2012. 1st ed (2013)

[3] National Oral Health Survey (2011) Ministry of Health, Cambodia

[4] National Oral Health Survey of Preschool Children 2005 (2007) Oral Health Division, Ministry of Health Malaysia

[5] Gao XL et al (2009) Community Dent Health. Dental caries prevalence and distribution among preschoolers in Singapore. Mar;26(1):12-7.