なんで??口を開けるとき、顎が「カクッ」となる方はみえませんか?

 

こんにちは、歯科医師の長谷川です!



みなさんの中に、お口を開けるとき

「カクッ」

「コキコキ」

というような音を感じる方はみえませんか?

 

これ、実は顎関節症と呼ばれるものなんです!

今回は、この音が出ることで不安を感じている方に、

その原因や、対処法をお伝えしていきます!

 

なんで音がなるの?


 

Pinterestより転載

まずは、顎の関節とは、どんなものでしょう?

左右に一つづつありますが、

下顎が、頭蓋骨に接する部分のことです。

 

「ひじ」や「ひざ」と全く同じで

骨と骨の間には、「円板」と呼ばれる

ゴムのような組織が入っています。

これのおかげで、スムーズに動くことができるんですね。

 

しかし、この「円板」の位置が

開け閉めのたびにずれてしまう。

それが、「カクッ」という音の原因なのです。

 

どうして音が出るようになるの?


実は、原因は特定できないことが多いんです。[1]

 

歯ぎしりや、食いしばりは勿論のこと

頬杖や、寝るときの癖も悪影響と成りえます。

また、リウマチや関節炎など、全身的な病気も関係します。

その他、外傷なども原因と成りえます。

 

「円板」がズレるようになると、

音が出はじめます。

(音が鳴らないまま経過するケースもあります)

そして、どこかの時点で炎症が起きると

痛みが発生してきます。

 

最終的に、「円板」がズレたまま戻らなくなると、

痛みは無くなりますが、

口が開けづらい状態となって落ち着きます。

 

「音が鳴るだけ」「痛みがある」その治療法は??


 

 

かつて、マウスピースや、

噛み合わせを治すことで

治療する方法が主流でした。

 

しかし、現在の世界的な研究では

噛み合わせを治すことや

マウスピースでの治療法は、

効果が少ないとの結果が出ています。[1,2,3]

 

そのため、痛みが出た場合は、

炎症や痛みを抑える薬を使い

安静にすることが治療となることも多いです。

 

もちろん、噛み合わせによっては

マウスピースなどが効果的な場合もあるので

まずは、歯医者さんに相談することが肝心です。

 

音が鳴るだけの場合は、

特に何も必要ないことが多いですが、

早期のマウスピースが有効な場合もありますので

これも、歯医者さんに相談することが勧められます。

 

また、音が鳴るのに

無理に大きく開けたりすることは避けるべきですし、

頬杖などの習癖も改善するようにしましょう。

 

口が開かなくなった!


 

時に、音が鳴っていたのに

それが急に消えることがあります。

そして、痛みを伴い、

口が開かなくなることもあります。

 

「クローズドロック」と呼ばれる症状ですが

この場合は、薬を使いながら

適切な処置が必要です。

この場合も、歯医者さんに相談するようにしましょう!

 

まとめ


 

今回は、顎の関節についてお伝えしてきました。

「顎関節症」というのは、未だに分かっていないことも多く

治療法も確実なものがないのが現状です。[4]

 

また、いったん症状が発生すると

長期にわたって悩まされることが多い病気です。

 

歯医者さんに相談していただくのが肝心ですが

すぐに噛み合わせを削って修正するなどは

現在の考え方からは、避けられるべきです。

 

まずは、現状の症状を診てもらい

その状況によって、「可逆的(後に戻せる)」治療から行なっていきましょう。

 

*顎関節症には、いくつか分類があり、今回はその一部を紹介しました。筋肉の痛みからくる顎関節症など、いくつか種類があるため、詳しくは歯科医師にご相談ください。

 

 

[1] Türp JC, Schindler H. (2012) The dental occlusion as a suspected cause for TMDs: epidemiological and etiological considerations. J Oral Rehabil. Jul;39(7):502-12.

[2] Niemelä K, Korpela M, Raustia A, Ylöstalo P, Sipilä K.J. (2012) Efficacy of stabilisation splint treatment on temporomandibular disorders. Oral Rehabil. Nov;39(11):799-804. 

[3] Nagata K, Maruyama H, Mizuhashi R, Morita S, Hori S, Yokoe T, Sugawara Y.J (2015) Efficacy of stabilisation splint therapy combined with non-splint multimodal therapy for treating RDC/TMD axis I patients: a randomised controlled trial. Oral Rehabil. Dec;42(12):890-9.

[4] Schiffman E, Ohrbach R, Truelove E, Look J, Anderson G, Goulet JP, List T, Svensson P, Gonzalez Y, Lobbezoo F, Michelotti A, Brooks SL, Ceusters W, Drangsholt M, Ettlin D, Gaul C, Goldberg LJ, Haythornthwaite JA, Hollender L, Jensen R, John MT, De Laat A, de Leeuw R, Maixner W, van der Meulen M, Murray GM, Nixdorf DR, Palla S, Petersson A, Pionchon P, Smith B, Visscher CM, Zakrzewska J, Dworkin SF; International RDC/TMD Consortium Network, International association for Dental Research; Orofacial Pain Special Interest Group, International Association for the Study of Pain. (2014) Diagnostic Criteria for Temporomandibular Disorders (DC/TMD) for Clinical and Research Applications: recommendations of the International RDC/TMD Consortium Network* and Orofacial Pain Special Interest Group. J Oral Facial Pain Headache. Winter;28(1):6-27.