「今日一日でクリーニングは終わりません」
そんなセリフを
歯医者さんで言われたことはありませんか?
「一日で全て終わらせてほしい!」
「そんな何回も通ってられない!」
「なんども来させて、ぼったくられてる!」
そんなことを考えたことがある方も
多いのかもしれません。
さて、そんな歯医者さんの言うことには、
なにか意味があるのでしょうか?
クリーニングとひとことで言っても、
そこにはさまざまな意味が含まれます。
例えば、「着色」を取ったり
「見た目の汚れ」だけをとる場合の「クリーニング」。
これは、単純に
歯の表面を綺麗にするだけなので、
着色の多さによりますが、
一回で終えることも可能だと考えられます。
なお、この場合は
保険外の治療となります。
他には、「歯垢」を取ったり
「歯石」を取ったりする
「クリーニング」があります。
このパターンがもっとも多いと思いますが、
歯ぐきが腫れていたり
歯周病が進行している場合に
「治療」として行われるもので、
保険で行われる、いわゆる「クリーニング」は、
全てこれに該当します。
保険で行われる「クリーニング」とは
歯ぐきが腫れている状態、
つまり「歯肉炎」や「歯周病」に対して
行われるものです。
そのため、まずは適切な検査が必要で、
その後も、歯周病の治療の流れに沿って
「クリーニング」は行われていきます。
その「歯肉炎」や
「歯周病」の治療にあたって、
もっとも大切なのが、
「プラークコントロール」
つまり、
「歯磨き」
であると、教科書には記されています。
”歯周病の発生および進行は、プラーク(歯垢)に起因する。このプラーク(歯垢)を取り除くことが、治療においてもっとも重要である” [1]
”病状の進行は、患者のプラークコントロール(歯磨き)のレベルにより左右されるーーー患者自身で行うホームケアが、治療のもっとも重要なスタートポイントである” [2]
つまり、この「歯磨き」を
改善してもらうことが、
「クリーニング」のスタートポイントであり、
もっとも重要なことなのです。
適切にご自身で歯磨きをしていただいた上で、
歯石の除去を行っていく。
そうして健康な歯ぐきの状態を
取り戻していく、
あるいは保っていくこと。
これが、「クリーニング」の
本当の意味なのです。
当院においても、
歯石の除去に先立ち、
「歯磨き指導」を
重点的に行っています。
しかし、患者さんにとっては、
歯ぐきの腫れは自覚しにくいもの。
どうして何度も治療にかかるのか、
我々の説明が至らないことから、
ご理解がいただけず
お叱りを受けることも多々あります。
それでも、
患者さんに、本当の意味で
健康なお口になっていただくため、
専門家として
この「クリーニング」の
大切さを伝える努力をしていこうと思います。
歯周病は、糖尿病と同じで
生活習慣病です。
無自覚に進む上に、
治療は一度に解決するものではありません。
もちろん
「来週大切な予定がある」
「来月から留学を控えている」
など、必要に応じて
まずは見た目の「クリーニング」から
ご相談できることもあります。
まずは、お気軽にご相談いただき、
治療の計画を一緒に作っていきましょう!
[1] 村井正大、野口俊英 「歯周治療の知識」(医歯薬出版)
[2] 清水雅雪 「歯周治療の臨床ポイント」(HYORON)