「放射線」と聞いて、皆さんはどんな印象を受けますか?
最近では、大震災の福島原発事故などもあり、「被曝」に対する心配も高まっていると思います。
しかし、不安な気持ちばかり大きくなり、必要な「放射線」の利用も避けられてしまうのもいけません。
まずは「放射線」を正しく理解することが大切です。
今回は、歯科で使われるレントゲンの種類と、身体への影響を考えていきましょう。
放射線とは、「放射性物質から放出される粒子や電磁波のこと」です。
なんだか、難しいですね。
つまり、そこら中に溢れている「光」のようなものです。
例えば、自然に宇宙からの放射線を日々受けていますし、食べ物や飲み物からもごく微量の放射線は出ています。
放射線は目に見えないものですが、身体への影響を「シーベルト」という単位で数字で表します。
私たちは、日々放射線を浴び、また口から摂取し、年間に2ミリシーベルト前後の放射線を浴びています。
しかし、放射線は浴びすぎると、身体に様々な影響があり、例えばガンなどの発生の危険を高めるため、ある一定の量を超えないようにしなければなりません。
さて、レントゲンは、この放射線を利用して、目に見えない身体の内側を撮影します。
歯医者さんでよく使われるレントゲンには、大きく分けて以下の3つの種類があります。
1.デンタル撮影(口内法)
2.パノラマ撮影
3.歯科用CT撮影(コーンビームCT)
デンタル撮影とは、お口の中に小さなフィルムを入れて撮影するレントゲンです。
放射線量もごく微量で撮影することができ、細かい虫歯や根の状態、歯周病の状態を見るのに適しています。
歯周病の治療では、10〜14枚に分けて、全体的に撮影することもあります。
パノラマ撮影とは、顔の下半分程度を、全体的に撮影する方法です。
全体の歯の状態、埋まっている親知らずの状態、顎の関節の状態などを調べるのに適しています。
いわゆる三次元のレントゲンであるCT撮影のうち、歯科に特化した撮影方法です。
医科で使われる全身的なCTに対し、放射線量を抑えることができます。
根の治療において、根の形態を細かく確認したり、親知らずの埋まり方を確認したり、インプラント治療での計画に使ったりします。
東京歯科医師会より抜粋
歯科で用いられるレントゲンの放射線は、上の表のように、ごく少量であることが分かります。
一番放射線量の多いCT撮影でも、アメリカへの飛行機内で自然に浴びる量と同じというのは驚きです。
しかし、それでも、むやみにレントゲンを撮影することは避けねばなりません。
また、「防護服を着る」などの基本的な配慮も必要です。
また、「デジタル」のレントゲンは「アナログ」のレントゲンより放射線量が抑えられます。
そういった工夫をした上で、必要なレントゲンを撮影することが望ましいと言えます。
放射線は、正しく利用すれば、治療や予防に大きく役立つ技術です。
リスクを恐れすぎるあまり、全く使用しないでは、適切な治療も行えません。
「リスク(危険)とベネフィット(利益)のバランス」とも言われますが、正しい理解の上で、適切にレントゲンを利用していきましょう。