たくさんある治療方法の中から、どうやって選ぶの?

世の中には

一つの病気に対しても

たくさんの治療方法が存在します。

 

現在、日本の医療の主流は

西洋医学ですが

漢方薬や、針、灸、

その他種々の東洋医学を含め、

医療には数え切れないほどの種類があります。

 

さて、そんな数多くの治療方法の中から

どうやって治療法を選ぶのでしょうか。

 

今回は、そんな医療の

基本的な考え方をご紹介していきます。

 

この治療って、本当に効果あったの?


 

1950年代、アメリカ。

狭心症の患者に対して、

手術で胸を開き

動脈を縛る。

そんな治療が日常的に行われていました。

 

 

とても効果の高い手術と言われていましたが、

ある時、とある医者がこう考えました

 

「これって、ホントに意味あんの?」

 

疑問を持ったこの医者は、

実際に手術を行い

「血管を縛ったグループ」と

「縛らなかったグループ」に分け

比較を行いました。[1]

 

そしてそれは、衝撃的な結果をもたらしました。

 

「この手術、やっても、やらんくても、一緒だわ。」

 

この比較する研究こそが、

治療方法を選択する上で

もっとも大切な概念。

「エビデンス」と言います。

 

EBM(科学的根拠に基づいた医療)


 

このような

実際に効果があるか

きちんと証明された医療が

「エビデンス」のある治療と言われ、

現在の西洋医学では正しいとされます。

 

この「証明」するものが、

「論文」と呼ばれるものです。

 

 

つまり、ルールに従い

正しく研究され、

厳格な審査を通った研究のみが

「エビデンス」として認められます。

 

この「論文」というものは

厳密には「学術誌に載った論文」のこと。

世界中にたくさんの学術誌がありますが、

それらは「インパクトファクター(IF)」というもので

順位づけされており

IFが高いものは信頼ある研究と言えます。

 

例えば、世界的に有名な

「ネイチャー」という雑誌は

IFが40程度であり、

世の中に大きな影響を与える研究が掲載されます。

 

歯科の分野では

もっとも高いものでIFが10程度。

ちなみに、日本の歯科の学術誌は

IFのあるものが存在せず

世界的には「エビデンス」とは言い難いものです。

また、一般的な雑誌や本、

あるいはテレビで言われただけのものは

「エビデンス」とは言えません。

 

でも、そんなこと言われても、一般人には分からないじゃん!


 

そうです、

こうした「エビデンス」のことは

専門家でも、本当に理解している人の方が

少ないのかもしれません。

それほど、論文を正しく読み

利用するのは難しいことです。

一般の方には、なおさらです。

 

しかし、日本では昔から

「有名な先生の言うこと」や

「テレビで言っていたこと」

を一番参考にしがちです。

医療関係者ですら

その傾向が大きいと言えます。

 

まずは

「エビデンス」

と言う概念を知り、

何か医療を受ける際には

「エビデンスがあるのかどうか」

と言う感覚で

お医者さんに相談することが

正しい医療の選択への

第一歩だと言えます。

 

まとめ


 

「エビデンス」と言うものは

西洋医学の考え方で

東洋医学においては

まだまだ「エビデンス」が

証明されていないことも多くあります。

 

例えば、漢方薬などは

「エビデンス」のない治療になります。

そこで、現在

中国では国を挙げて、

そう言った古来からの東洋医学の

「エビデンス」作りの研究をしています。

 

 

日本の医療関係者も

良いと言われている治療の

「エビデンス」を作る研究を

積極的に海外に発信していくことが

必要と言えます。

 

まずは、是非

この「エビデンス」と言う概念を

知っておいてくださいね!

 

 

[1] ダン・アリエリー「予想どおりに不合理」早川書房 2013年